3Dバーチャルと3Dプリントを統合、マイクロソフトとオートデスクのHoloLens

まずは共通の3Dファイル形式を開発、CADと3Dプリンターの課題解決

3Dファイルのフォーマットを統一しようという動きが登場している。それがマイクロソフトが進める3MFファイルだ。ご存知の方も多いとおり、CADファイルは異なるCADソフトで使用したりする場合、そのままのCADデータでは使用することができない。そのため生のCADデータから中間ファイルと言われる形式に変更して記録する必要がある。

この中間ファイルで代表的なのはISOの規格であるSTEPや、最も普及していたIGESがあるが、それ以外にも多くのファイル形式が存在する。基本的に中間ファイルのフォーマットで保存されたデータであればCADで開くことができるが、全てのソフトに完全に互換性があるわけではない。

また3Dプリンターで出力する場合のファイル形式はSTLなどのフォーマットを使用しなければならない。このように、3Dデータの扱いは、アプリケーション、サービス、プラットフォーム、プリンターなどによってバラバラであり、より統一したファイル形式が必要になる。

たとえばあるCADで作ったデータを他のCADソフトや3Dプリンターで使用しようとしても、データが破損したり修復したりしなければならない場合が多々あるのが現状だ。しかし、その形式が統一されていれば、どんなソフトウェア、どんなプラットフォームでも問題なくスムーズに使用できるわけだ。

そこで開発されるのがマイクロソフトの共通の3Dファイル3MFである。しかしそれは単に従来通のファイル変換の課題を解決するにとどまらず、3Dプリンターと3Dデザインに新たなフェーズをもたらすものだ。

本日はマイクロソフトとオートデスクの新たな取組をご紹介。

正確かつ完全に3Dプリンターへデータ転送できるファイル形式3MFとは

マイクロソフトはまず、共通ファイル形式実現のコンソーシアムを立ち上げている。3MFコンソーシアムと言われる共同開発プロジェクトは3DCADと3Dプリント業界で主体的な役割を発揮する7つの会社で構成されている。マイクロソフトを中心に、ヒューレット・パッカード、オートデスク、Shapeways、ダッソー・システムズ、netFabb、SLMソリューションの7社だ。

このコンソーシアムが開発するファイルフォーマットは「.3MF」というファイル形式で、現在このコンソーシアムで採用され、マイクロソフトは2015年度に正式に起動させることにしている。この統一ファイルを普及させることで、デザイナーやエンジニア、企業における3DCADと3Dプリントへの相互運用がよりスムーズになり、これまでの交換時における破損や手間を解消する動きに繋がるわけだ。

これにより、正確かつ完全に3DプリンターへのCADシステムからのデータを転送することができるようになる。

3MFの主な利点

  • 3Dモデルの全ての情報は一つのアーカイブに含まれる
  • PNGやJPEGのように、人間が読めて見えるファイル
  • フォーマット情報を付加することが可能
  • 変換をサポート
  • 特許請求の範囲内で3MFメンバーと合意すればロイヤリティフリーでオープンに

真の狙いはバーチャル3Dホログラムを3DプリントできるHoloLensへの統合

既に冒頭で述べたが、このマイクロソフトを中心に開発された3MFファイルは、CAD間におけるファイル交換や、3Dプリンターへの反映のみが目的ではない。さらにその範囲を越えた、デジタル製造の幅を一気に拡大する使用用途を目的としている。

それはマイクロソフトが開発する3DバーチャルリアリティのHoloLensと3Dデザイン、3Dプリントとの統合にある。HoloLensとは、マイクロソフトが開発するバーチャルリアリティのヘッドマウントディスプレイで、現実の世界に3Dバーチャルのデータをもたらすもの。

このHoloLensを装着すれば、人間の手や指などによるジェスチャーや視線、声に反応し独自のホログラムを作成することができる。言うなれば、このヘッドマウントディスプレイをかければ、パソコンを使用しなくても指などのジェスチャーコントロールで3Dモデルがホログラムで作れるというわけだ。

面白いのが、現在タブレットやスマートフォンなどで登場している既定のパーツを組み合わせて遊べる簡単な3Dデザインアプリのような機能もあれば、複雑な設計が要求されるCADソフトも、このHoloLensを装着することで、パソコンのモニターで設計されている3Dデータをその場でホログラムとして視覚化することができる。

リアルタイムで多くの人々と設計データを話し合えれば、よりスマートな意思決定ができるようになるというものだ。3MFの開発は、この新たな3Dプラットフォームとも言えるHoloLensに帰結させることが狙いなのだと推測される。

HoloLens動画

マイクロソフトHoloLensのヘッドマウントディスプレイ
3Dモデリングがバーチャルのホログラムで出来る
複雑な設計データもPCと連携しその場に表示

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オートデスクMAYAやフュージョン360とも連動

ちなみにHoloLensの機能は上記のように、3Dモデルを作って、プリント出来るだけではない。オートデスクの他の3Dデザインソフト、オートデスクMAYAと、フュージョン360との連動も可能になる。オートデスクMAYAは、3Dアニメーションをつくる包括的なソフトウェアでハイエンドな3Dモデルをつくるソフト。

一方フュージョン360はクラウドベースの3Dモデリングソフトで、基本無料で使用することができるサービス。初心者から専門のエンジニアまで幅広く使用できる3Dデザインソフトだ。HoloLensでは、この二つのソフトウェアで作成した3Dデータをバーチャルホログラムとして仮想空間で開くことができる。

既にオートデスクMAYAと、フュージョン360を使ってデザインしているユーザーにとってはHoloLensを使用するだけで目の前に3Dホログラムで表示され、リアルな物体としてどの角度からも見ることが可能になるわけだ。これまでパソコンのモニターでしか確認できなかったものが、リアルな物体に近い形で確認出来る上、改善ポイントがひと目で洗い出される。

これによってHoloLensの3Dプリント機能は信頼性の高い、最適化されたモノになり、ユーザーは安心して3Dプリントを利用することができる。

3Dデータを呼び出し、編集も出来る

まとめ デジタル製造は新たな段階に進む

3Dデザインと3Dプリントの世界は、いよいよ新たな段階に進もうとしている。このマイクロソフトとオートデスクのHoloLensのように、バーチャルリアリティとの融合で、3Dデータはどんどんリアルなものに近づくことになるだろう。また同時にインテルやアップルのように3Dスキャン機能カメラをスマートフォンやタブレットに汎用装備する動きに見られるように誰でも3Dモデルを使用出来るようになる。

このように3Dモデルはより身近な、手軽な存在になっていくことが予測されるが、同時に3Dソフトと3Dプリンターが乱立し、全てがバラバラの状況になりかねない。しかし、共通の3MFのようなフォーマットで規格化されれば、全てのソフトウェア、あらゆるプラットフォームがシームレスに統合される。

それは使用する人々、デザイナーもエンジニアもアニメーターも一般人も、クリエイティブなものに関わるありとあらゆる立場の人にとってとてもありがたいものだ。これまで3Dプリンターの開発やソフトウェアアプリケーションの開発は、玉石混合、群雄割拠の様相を呈していたが、こうしたユーザー目線になった圧倒的なサービスの登場により、無駄な物は淘汰され、真に価値が認められるものだけが残るようになるだろう。

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