ポリ塩化ビニル(塩ビ)の3Dプリンター用フィラメント3DVinyl

高い汎用性を持つポリ塩化ビニル(PVC)の3Dプリント用材料の開発

続々とFDM(熱溶解積層法)の3Dプリント材料としてフィラメント化される熱可塑性樹脂たち。代表的なABS樹脂PLA樹脂を始め、既にポリカーボネート(PC)や、ポリエステルポリエチレンテレフタレート(PET)熱可塑性ポリウレタン(TPU)ポリプロピレン(PP)ナイロンポリアミドなど、これまで金型で使用されてきたほとんどのプラスチックが対応しつつある。

ここに登場しているプラスチック素材たちは、現代に流通するあらゆる工業製品に使用されており、こうした素材が3Dプリント用にフィラメント化されることで、さまざまなプロダクトが3Dプリンターで作ることが可能になる。そして新たに、全世界で使用量が第3位にのぼる高い汎用性を持つプラスチック素材、ポリ塩化ビニル(通称塩ビ、PVC)が3Dプリンター用にフィラメント化されることとなった。

ポリ塩化ビニルは塩ビの通称で親しまれる素材で、ビニールとしてさまざまな製品に使用されている。最も代表的な製品としてはビニールハウスや電源コードのカバー、バッグの素材などが挙げられるが、実は非常に高い強度を持つプラスチック素材でもある。一般的にポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)は、柔らかい柔軟性がある素材としてのイメージが強いが、高い耐候性や耐水性、耐久性を持ち、こうした特性を生かして工場や下水道に使用される配管としても使用されている。

本日は、そんな使用量第3位のプラスチック素材、ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)の3Dプリンター用フィラメント3DVinylをご紹介しよう。

FDM(熱溶解積層法)3Dプリンターの最適化に成功

ポリ塩化ビニルの3Dプリンター用フィラメント3DVinylを開発したのは、ポリ塩化ビニルメーカーChemson Pacific社だ。Chemson Pacific社は長年ポリ塩化ビニルの専門メーカーとして活躍し、今回フィラメント開発を行ったのはそのオーストラリア支社である。実はこのオーストラリア支社は、ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)を開発する際に使用する安定剤(非重金属安定剤)の開発と生産に特化した企業で、以前から産業用ポリ塩化ビニル(塩ビ)のアプリケーション開発に専門知識を持つ存在であった。

今回新たに開発された3DVinylは、そんな安定剤専門に特化したオーストラリア支社が中心に行うことで、3Dプリントに必要な熱可塑性の性質を存分に引き出すことに成功している。これにより開発されたポリ塩化ビニルの3Dプリンター用フィラメント3DVinylは、ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)が持つ優れた耐久性や耐候性などに加え、3Dプリントに最適な安定性や反りの防止などを実現している。

ちなみにポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)は、シート積層造形であるLOM(Laminated Object Manufacturing)と言われるシート状の材料を積層しレーザーでカットする3Dプリント製法の材料として使用されてきたが、FDM(熱溶解積層法)としては3DVinylが世界初となる。

FDM 3Dプリンター用に最適化することに成功。ポリ塩化ビニルの特長でもある耐久性や耐候性が強化されて登場。

※写真クレジット:クリス・ダン(WWW.ORANGEORBPHOTOGRAPHY.COM.AU)

LOM(Laminated Object Manufacturing)のシート状積層3Dプリンターでは既に使われていた塩ビ。しかしフィラメントでは世界初。

強力な耐久性と耐候性、耐溶剤性でABSに取って代わる可能性

ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)の3Dプリントフィラメント3DVinylは、実は開発に2年以上もの歳月がかかっているという。その間、デュポンの専門家や3DプリンタメーカーであるAIOロボティクスなどの協力を仰ぎ、非常に強力な3Dプリント材料に仕上げている。

ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)が本来持つ性能である、耐候性や耐久性、耐UV特性、耐溶剤性といった性能が大幅に強化され、現在市場に流通している多くのポリマー材料では再現することができない物理的性質を組み合わせることに成功したとのこと。現在3Dプリンターの材料として、最もポピュラーな存在がABS樹脂だが、3Dvinylは、多くの家電製品や治具などの素材として多用されるABS樹脂に、取って代わる可能性を秘めていると期待されている。

3DVinylは既にデスクトップタイプの3DプリンターメーカーであるAIOロボディクスのZEUSで使用できるほか、導電性フィラメントを開発するFunctionalizと提携を結び、導電性を備え、静電気散逸を持つ特殊なフィラメント素材の開発に乗り出している。

高い耐久性や耐候性、耐溶剤性から配管などに使用される素材。ABSに取って代わる主力材料になる可能性も
AIOロボティクスのデスクトップタイプの3DプリンターZEUSに対応

ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)の3Dプリンター用フィラメント3DVinylの特長

  • 耐久性
  • 耐UV性
  • 耐候性
  • 耐溶剤性
  • 難燃性(AS3837遵守)
  • 高い剛性
  • 低溶融粘度
  • 優れた流動特性
  • 熱的安定性
  • 優れた層の接着
  • 底層の反りと貧しいベッドの接着性の排除
  • サポート剤の除去が用意
  • 現在のポリマーベースのフィラメントに比べて低いエネルギー消費量
  • 50パーセント少ない化石燃料

まとめ 新たなバージョン開発で世界市場に打って出る

現在、3DVinylはオーストラリアの塩ビ業界のリーダー企業Welvicとオーストラリア連邦科学産業研究機構、通称CSIROと提携を結び、オーストラリア、ニュージーランド、ASEANを中心にポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)の3Dプリントフィラメントを流通させようとしている。また、新たにFunctionalizと共同開発する導電性、静電気散逸を備えたフィラメントは、オセアニア地域だけではなく北米、ヨーロッパなど全世界に市場範囲を拡大していく予定だ。

これまで述べてきたように、3dvinylは、ポリ塩化ビニル(塩ビ、PVC)の最大の特長である耐久性や耐候性、耐溶剤性といった性能が、最大限発揮されるフィラメントとなっている。こうした特性から、現在FDM(熱溶解積層法)の主力材料であるABS樹脂のフィラメントと同様にプロトタイプや機能性が求められるパーツに重宝されるかもしれない。3Dプリンター用のフィラメント開発は未だ始まったばかり、今回の塩ビの3dvinylのように特性が強化されたフィラメントが今後も更に登場するだろう。

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