3Dプリンターでアジアのハブ拠点の地位を高めるシンガポールの政策

By | 2013年10月2日
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3Dプリント技術の確立に公共政策を取り入れるシンガポール

3Dプリンターの最大手である米国Stratasysはアジア太平洋地域での3Dプリンターの需要拡大の拠点としてシンガポールに本拠地を置きました。その販売地域には日本をはじめとして中国、東南アジアを含み、自動車、家電、産業機器、医療、歯科、消費財などのいろいろな分野での販売を視野に入れている。

こうした大手3DプリンターメーカーであるStratsysの動きと合わせてか、シンガポール政府の3Dプリント技術に対する取組が非常に興味深い。

シンガポールはアジアにおけるグローバルサプライチェーンのハブ拠点としての地位を確立していますが、早くも3Dプリント技術の普及からくる、グローバルサプライチェーンの変革を視野に入れているようです。

2013年の頭にシンガポール政府は3Dプリントによる製造業を発展させることを重要分野と位置付け今後5年間で約4億ドル(400億円)の予算をつけたという。

3Dプリント技術で新たなグローバルサプライチェーンとしての地位を目指す

シンガポール政府は3Dプリント技術が、既に確立されたサプライチェーンや、ロジスティックス、製造業、知的所有権を分裂させてしまう可能性があるとも見ており、3Dプリント技術を使用する公共政策を立案し始めている。

具体的なやらなければならない政策として、3Dプリントの一番の特徴はオンデマンドに対応した少量生産が強みだが、これによって、製造現場において効率的な材料の使用ができ材料の無駄がなくなる、すなわち、伝統的な大量生産方式はある程度不経済な部分が伴うため、サプライチェーンに分裂を生む可能性があるということだ。

また従来の大量生産方式で使用されていた設備とくらべて、よりコンパクトな設備でみ、世界中どこからでもデジタルデザインデータを利用することで製造化が可能になるとも見ている。

こうした状況に備えるため、シンガポールは以下の点について政策フレームワークを必要としている。

  1. 知的財産権
  2. 法的責任
  3. 業界標準
  4. インフラ整備
  5. セキュリティ

知的所有権の問題

3Dプリンターで使用する3Dデータはソフトウェアに基板を置いている。インターネットから設計図をダウンロードして製品化することができる。これは音楽などのデジタルデータとよく似ている。こうした3Dデータの問題は知的所有権を犯す可能性があるため、そのためのフレームワークが必要になるとしている。

法的根拠の確立

知的所有権とも関係がありますが、3Dプリントによって製造されたものの法的根拠を確立させておく必要がある。現在のところ3Dプリント製品に関して、不正コピーされた場合や、製造された製品自体が引き起こした損害の責任の所在が明確でないことが問題。誰が責任を取るのか、設計者なのか、機械メーカーなのか、消費者なのか、、

明瞭な法的枠組みを設けて、消費者、デザイナーおよび生産者を保護する必要があるとしている。

業界標準の設定

消費者に対する製品の信頼性を確立するためには、3Dプリンターで製造する部品や製品、プロセスに関して、明確な業界基準を定めることが必要としている。一定の業界基準を設けることが、生産現場における一定の効率性を保ち、市場を規制し、投資家の信頼を構築することにつながるとしている。

インフラ設備の確立

3Dプリントによる製造を確立するためには、デジタルと設備両方の面でインフラを確立する必要があるとしています。シンガポールは高度なデジタル通信網と高品質なデジタルインフラを備えている。

そのデジタルインフラを使用することによって3Dプリンタのカスタマイズ、オンデマンド生産といった特徴を最大限生かし、ロジスティック・ハブとしてのシンガポールのステータスを強固にできるかもしれない。シンガポールは強いロジスティックネットワークを持っているが、ロジスティック会社のビジネスモデルもある程度変更する必要がある。

セキュリティ体制の構築

3Dプリンターは武器の設計データなどによって銃などが製造されてしまう危険性がある。武器の生成および生産は重大なセキュリティ問題で、犯罪者やテロの危険性などもあるためセキュリティに関する法案を制定する必要がある。3Dプリンターを所有している人や購入する人に登録を要求する方法もある。

まとめ

シンガポールは充実したインフラ網を持ち、法人税率も低く、世界の物流拠点として機能、グローバルサプライチェーンの機能を持っている。大量生産、大量供給を生み出すグローバルサプライチェーンと全く相反する3Dプリント技術を取り入れることによって、単なる物流拠点としてではなく、オンデマンドに対応した製造拠点としての地位も確立することを視野に入れていると考えられる。

5年間に約400億円の予算を投入し、3Dプリント技術を最大限生かす体制を作っていることは日本の製造業の在り方を考えるうえで非常に参考になると考えられます。

また、シンガポールだけではなくイギリスや中国などの諸国も3Dプリント技術に対する政策をまとめているとのことで、製造業、サプライチェーンに大きな変革をもたらす技術革命としてとらえており、日本も官民一体となって取り組む必要がある。

シンガポールの3Dプリント技術の取組はこちら

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