3Dプリンターと金型の組み合わせは製造プロセスを激変させる

製品開発の試作にかかるコストと時間

金型を使った射出成形は、量産だけではなく試作品の製造でも頻繁に使用される加工方法だ。製品開発において試作品を作ることは製品化するうえで必要不可欠な工程といえる。製品コンセプトからデザインをおこし、それをカタチに落とし込むことで、改良すべき点や、変更しなければならない点などが明確にわかるからだ。

この試作品製造に使用される金型は一般的な金型とは違い、簡易金型と言われるものが使用される。通常の大量生産用と比べ、少量を作ることを目的としているため、耐久性はそこまで求められないのが一般的だ。この簡易金型だが、試作品を製造するたびに新たなものを作る必要がある。

何度も何度もデザインを改良し、最終状態に近づけていく過程で、様々なパターンのプロトタイプが必要になる。いわばプロトタイプの数と同じ数だけの簡易金型が存在することになるのだ。

こうした簡易金型、大量生産用の合金の金型とは違い、アルミ合金製や樹脂製、コンクリート製などさまざまなものが存在する。素材によって特長やコストは異なるが、少なからず簡易金型自体を作るのにも鋳造や切削などの加工が必要でそれなりのリードタイムとコストがかかる。

しかし、今この簡易金型を3Dプリンターで作ることにより、大幅にプロトタイプ製造のコストと時間を改善する取組が行われつつある。本日はストラタシスの3Dプリンターと射出成形でプロトタイプ製造を大幅に改善する取組をご紹介。

リードタイムを95%カット、コストを70%削減

この取組を行ったのはストラタシスと、プロダクトデザインで歴史ある企業ウォーレル社。ウォーレル社はさまざまな工業用品のプロダクトデザインや製品設計を行なう40年の歴史を持つ企業で、主に医療機器やヘルスケア用品をはじめとし、さまざまな家庭用品などのデザインを行っている。

彼らが提供するプロダクトデザインは数多くの有名企業の製品も手掛けており、アップルのマック用ビデオカメラや、紅茶のリプトンなど多くの製品をデザインしている。

そんなウォーレル社はデザインだけではなく、プロトタイプの製造もサービスの一貫として提供している。今回発表されたのは、医療機器のデュアルフロー無針血液収集システムのプロトタイプを3Dプリンターと射出成形で作ったというもの。

これまでウォーレル社はプロトタイプ用の簡易金型をアルミ合金で作っていたが、ストラタシスのPolyjet技術による3Dプリンターで作ることで大幅に効率化できたという。

簡易金型で作られた医療機器のプロトタイプ

従来のアルミ合金による金型を作るためには、伝統的な金属加工である鋳造が使用される。鋳造とは、溶けた金属を砂型などの方に入れて冷却して固める技術。現代でも非常に幅広く使用されている技術で、ロウ型を作り、ロウ型のまわりを砂で固めて熱することで空洞を作る製法だ。

アルミによる金型はこの鋳造で作られた後、切削加工を加え、精密さを出すという工程がとられている。ウォーレル社では従来のアルミ製の簡易金型を作るのに、約8週間のリードタイムがかかっていたが、今回ストラタシスの3Dプリンターを使用することで、数日で作ることができ、リードタイムで95%も早くなったとしている。

また金型製作にかかるコストも70%近くも削減することに成功し、製品開発を飛躍的に効率化することに成功した。使用された3Dプリンターはストラタシスの高性能モデルObjet500 Connex。

ストラタシスのPolyjet技術で作られた樹脂製簡易金型はアルミ金型よりもはるかに早く安くできる

まとめ 製造プロセスを変革する事例

このストラタシスとウォーレル社の取組は、製品開発の歴史を変えてしまうものだと言える。この方法では、製品企画から発売までの期間が圧倒的に早くなる。従来の鋳造と切削によるアルミ金型では、試作品を改良するたびに、8週間のリードタイムがかかることになる。

安易なたとえだが、5回試作品を改良すれば、それだけで40週、約10ヶ月の期間がかかるという計算だ。しかし、3Dプリンターによる改良では、元の3Dデータを変更することで、3Dプリントできるため同じ改良を行ったとしてもはるかに短い期間で最終形態まで改良することが可能。

またこの方法は、最終製品を市場に投下してからも有効な手段を発揮する。最終製品を顧客に使用してもらうことで、そこから多くのフィードバックを得ることができ、より柔軟に次のモデルの改良に反映することができる。

他社を上回る圧倒的なスピードで製品開発を行ない市場に投下、そして更なる改良モデルを作り顧客に提供する。3Dプリンターを使いこなすことで、そんな高速生産が可能になる。

素材や製法などが限定的なため、すべての製品開発に当てはまることではないが、この新たな技術に対応するかしないかで、企業間で圧倒的な競争力の差が生まれることになるだろう。

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