世界を変える素材「グラフェン」の3Dプリントプロジェクト「P600」とは

世界を変える可能性を持つ新素材グラフェンとは

今注目を集めている3Dプリント技術は、一般的にプラスチックの素材が使用されている。設計図である3DCADデータから製品を製造する際、プラスチックを溶かして何層にも積み重ねることで成形化するのが通常だ。

もともと製品の試作サンプルを作る目的で開発された3Dプリンターだが、最近では技術の進歩とともにいろいろな素材での研究がなされている。プラスチック以外に最近注目されてきているのが金属用3Dプリンターやゴム、木材などで素材の多角化は新しい用途や発見を生み出してくれる。

こうした新素材の研究が進む中、新たな新素材として注目されているのがグラフェンだ。グラフェンはもともと炭素原子で作られている素材で、自動車分野から航空宇宙産業、エレクトロニクス分野にわたり非常に汎用性がある素材として期待されている。

そんな新素材として注目を集めるグラフェンを開発するのはアメリカのアメリカングラファイト·テクノロジーズ社だが、新たな3Dプリントプロジェクトを進行中だ。

グラフェンイメージ

3Dプリントプロジェクト「P-600」とは

アメリカングラファイト・テクノロジー社はもともとアメリカの鉱物調査と技術開発を行う上場企業で、炭素原子からなるグラフェンの研究開発を行っている。

グラフェンは21世紀の”奇跡の素材”として記載されており、柔軟でありながら銅や鋼より強く、より導電性に優れていると考えられている。

また、シリコンに代わる素材としても注目されており、より速くより安く、より柔軟につながるとされている。グラフェンの3Dプリンティングプロジェクト「P-600」はこのアメリカングラファイト・テクノロジー社とウクライナのハリコフ研究所が共同してあたるもので、ウクライナ科学技術センターが承認し支援を行う。

このプロジェクトでは3Dプリントのための材料として、ナノカーボンに含まれる物質、すなわちグラフェンの特性を研究するというものだ。「P-600」プロジェクトはナノテクノロジー、3Dプリント、固体物理、材料と熱物理学の専門家たちで構成されるというもの。

ウクライナ科学技術センター(通称STCU)は旧ソビエト時代に培われた兵器開発やR&Dの知識や技術力を軍事ではないハイテク経済の分野に転用することで経済発展を目指そうという趣旨の研究機関だ。

ウクライナ科学技術センターはいままでアメリカやカナダ、EUなどの160もの政府プロジェクトへの参加や、1200以上の各国の大学や研究機関の科学プロジェクトを支援している。

民間企業との共同研究も盛んで、代表的な企業として3M、インテル、ミシュラン、など140企業とのパートナーシップを結んでいる。2013年10月1日にウクライナ科学技術センターは正式にアメリカングラファイト・テクノロジー社とハリコフ研究所の共同研究に承認を行った。

まとめ

ウクライナ科学技術センターからの正式な承認を得て、アメリカングラファイト・テクノロジー社のCEO Rick Walchuk氏は下記のコメントを発表している。

私はプロジェクトP-600のスタートについて非常に興奮しています。私は数日の間に3Dプリントにグラフェンとナノカーボン材料を使用することを探求する方法論について、プロジェクトマネージャーとミーティングを行います。私たちはいくつかのエキサイティングなアイデアを持っています。そしてこのアイデアが成功した場合、私たちの開発は、市場のために新しい革新的な製品を提供することができると願っています。今、私たちはP-600プロジェクトのプロジェクト管理者であるウクライナ科学技術センター(STCU)からの承認を手にしたので、直ちにプロジェクトを開始させることができるようになりました。

3Dプリント市場は2016年には32億ドル、2020年には52億ドルになるとも予測されており、3Dプリントの材料市場だけでも2025年には6億ドルに上るとも予測されている。

しかしこうした予測は様々な素材の研究開発がされている今、一つの目安にしか過ぎないのではないだろうか。3Dプリント技術の向上と素材の多様化がすすめばさらに多分野での利用が可能になり、予測よりも大きな市場になるかもしれない。

グラフェンの3Dプリントの研究はようやく始まったばかりだが、その商用利用はあらゆる分野での使用が期待されている。

再生可能エネルギーや太陽光パネル、液晶パネル、シリコンの代替品など様々な分野に及んでおり、こうした多分野での利用と3Dプリントによる添加剤製造が結びつけば製造者側にとっては更なるコストカットと新製品の開発に取り組む可能性が増えると期待できる。

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