3Dプリンター教育で製造業の即戦力になる人材育成を行うバージニア大学

即戦力を育てる3Dプリント教育

3Dプリンターが与える影響のうち、最も大きい分野の一つが教育だ。日本においても経済産業省が中心となって3Dプリントの政策を進めているが、当然のことながら学校教育への普及ということも含まれている。

具体的には、大学や高専を対象とした導入費用の3分の2を補助する支援で、来年度2015年には、この対象を中学、高校にも拡大する予定だ。既に一部の大学や専門学校では3Dプリンターが導入され、製品開発やプロダクトデザインの授業に生かされている状況だが、即戦力となる人材を育てるためには実践的なカリキュラムが必要だ。

経産省は資金的な支援を行うに留まるだろうが、肝心の核となるカリキュラムの育成は文科省の範疇。単に3Dプリンターを配備し、3Dデータからプリントできるというレベルのことを習得させても、それは即戦力のある人材とは言えないだろう。

そこで肝心なのが、それを使用し、どのような技術を学生に習得させるかにある。今後少子高齢化で人材不足が進む中、日本経済を担う若者のレベルアップを行うのも教育機関、行政機関の重要な仕事だ。

本日は、バージニア大学の3Dプリンターを使った実地教育が極めて実践的であり、学生が社会に出た後も即戦力として使えるレベルの教育としてご紹介する。

現実の製造を知らないと作れないレプリカ

本日ご紹介する教育現場の3Dプリンターの使用方法はバージニア大学の航空宇宙学部の「ジェットエンジン製造コース」だ。このコースでは学生たちが3Dプリンターを使って、ロールスロイスのターボファンジェットエンジンAE3007を一から組み立てるという実地演習を行っている。

まずはじめに学生たちには、エンジン設計図と回路図、43個のパーツのCADデータが与えられる。そしてそれを元にAE3007のレプリカを作成することを求められる。

しかし、面白いのがここからで、この段階だけでは学生たちはレプリカを組み立てることは不可能になっているというのだ。そこでは単純にパーツを3Dプリンターで製造し、バラバラの部品を組み立てればエンジンのレプリカが作れるといったものではない。

現実の世界におけるジェットエンジン製造の仕組みや、エンジンの構造上の課題、各パーツ部の耐久性といったものを正確に理解していないと組み立てられないようになっている。

そこでは、実際のジェットエンジンが機械加工で作られるということまで計算しなければならない。ここで学生たちは実地に勉強し、正確に機能するレプリカを作るため、さまざまな勉強をすることになるというわけだ。

学生たちが組み立てたロールスロイスのジェットエンジンAE3007のレプリカ

AE3007レプリカの動画

ちなみにこのエンジンのレプリカは2000RPMで回転し、銅マニホールド(エンジンの唯一の非3Dプリントパーツの一つ)の剛性やストレスを有限要素解析テストを行い、実際のエンジンと同様の機能テストも行っている。また、実際のこのエンジンレプリカの製造にかかるコストは約3,000ドルで、もしこれを3Dプリンターを使わなかった場合は、約25万ドルかかる計算だ。

まとめ

このバージニア大学の「ジェットエンジン製造コース」の実習を経た学生たちは、その後実際に飛行するUAV(無人航空機)を3Dプリントして作ることに挑戦し成功している。

2年間製造にかかったその無人航空機は農業や水といった環境問題専用で使用されているという。まさに、実習から実際の製造まで一貫して体験することができる教育だといえるのではないだろうか。

こうしたカリキュラムを経た学生たちは、すぐさま製造現場で即戦力として働くことができる。3Dプリント技術は今後の企業にとって最も求められる技能だが、単純にプリントしたり、3Dデータ化できるということが必要なのではない。

そこには現実世界で作られるモノや製品の物性、機能性を理解した開発能力と、さまざまな問題点を克服する解決力が求められるのだ。最先端技術を与えたからといっても、教えるカリキュラム、指導内容一つで、卒業時の学生のレベルは天と地のさがつくだろう。そうした観点からいうとバージニア大学の実地演習は非常に参考になる。

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