素材の限界を引き出す3Dプリンターの力、10万倍の重さに耐えるアルミ格子

素材の限界を変える3Dプリンターの力

3Dプリンターの力は、最先端素材との組み合わせで大きな力を発揮する。3Dプリンターが持つ機能、従来の製法で作ることができない形状を作れる機能と、素材本来の特性が掛け合わさることで、これまで実現することができなかった新たな製法を発揮することができる。

こうした3Dプリンターと素材の使用はこれまでいくつかの取組をご紹介してきたが、本日ご紹介するアルミキューブの3Dプリントは、建築分野やエンジニアリングに、大きな影響を与えそうだ。アルミニウムは金属素材の中でも最も身近な素材。一円硬貨に始まり、さまざまなものに使用されている。その特長は軽くて加工性が高いということがあげられるが強度が低い。

純アルミニウム自体は強度は低いが、銅やマグネシウム、ニッケル、亜鉛などのさまざまな金属と合わせることで作られるアルミニウム合金は優れた強度を持つ。アルミニウム合金はその配合によってさまざまな種類が存在するが、今新たに3Dプリンターで特殊な構造を作ることにより、信じられない特性を発揮している。

わずか24mmのアルミ格子は10万倍の重量に耐える

その取組はアルミニウム合金を格子のキューブ状にすることによって、信じられない特性を与えることができるというものだ。この実験を行ったのはアメリカのパデュー大学の研究チームで、アルミニウム合金を格子構造に3Dプリントすることで、軽量化実現しながら、驚くべき強度を備えることができるとするもの。

この格子状のキューブの3Dプリントには3Dsystemsの金属用プリンターPROX200を使用。素材はアルミニウム合金の中でも耐食性と鋳造性に優れるAlSi12を使用して作られている。通常アルミニウム合金の製法は、溶けたアルミ合金を形に流し込む鋳造か、板状に引き伸ばす圧延や押出が一般的。

この格子状の形状は上記で述べたような鋳造や圧延、押出では作ることは不可能だ。この3DsystemsのPROX200を使って作られたキューブは、重さ3.9グラム、長さ24mmの立方体。実験ではこの小さな、わずか24mm四方のアルミキューブに乗っかるというもの。まずは体重75kgの大人の男性に乗ってもらったところ、バランスの問題でキューブの外側は多少破損したが、完全に乗って耐えることに成功している。

その後さまざまなクラッシュテストを行い、キューブの形状を修正し、最終的な実験結果では最大で408kgの重量まで耐えうることが可能となった。これは単純計算で10万倍の重さに耐えうることを証明している。

75kgの体重の大人が乗る実験
実験では最終的には408gまで耐えることができた

まとめ

このアルミ合金の格子キューブの実験ほど、3Dプリンターの可能性を示してくれるものは無いだろう。例えば、この格子状のキューブは、従来の製法である鋳造で作る場合には非常な手間とコストがかかる。しかし、3Dプリンターであればダイレクトでこの複雑な形状を作ることができるため製造スピードも速く、修正改良も容易だ。実際の商用利用にはまだ先だろうが、建築や製品開発の場で応用が広がるかもしれない。3Dプリンターを利用して、個人がモノを作るのはなかなか難しいだろうが、多くの立場の人々、デザイナーや、開発者、エンジニア、アーキテクト、メーカーなどが製品開発に参画し、優れたプロダクトを世に送り出す力を秘めている。

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