世界最大のクラウドソーシングで3Dデータの仕事が急増、恩恵と弊害とは

拡大するクラウドソーシング市場と発注内容の変化

クラウドソーシングは、日本でも定着している、仕事の受発注サイトだ。発注者側は全く顔を合わすことなく仕事を制作者に以来することができる。

クラウドソーシング市場は年々拡大を続ける傾向にあり、日本でもその市場規模は拡大の一途をたどっている。

下記は矢野経済研究所の発表しているクラウドソーシング市場の市場予測だが、2014年度で391億円規模、4年後の2017年度には1473億円の規模だ。

こうした拡大は、日本だけではなくグローバルに展開する海外の大手クラウドソーシングサービスでも同様だ。世界規模では2018年度近くには1兆円規模に達するとの見方もある。 そんなクラウドソーシング市場だが、仕事の内容はほとんどが、Webやシステム関連、デザインレイアウト、ロゴ制作といったもの。

しかし、いまこうした仕事の内容に変化が見られているという。 世界最大のクラウドソーシングサイトFreelancer.comによるとここ2年間で3Dプリント関連の仕事が急増しているとのことだ。3Dプリント関連市場は急速に拡大すると見られており、3Dプリントや3Dデータに精通する人材需要がさらに高まると思われる。本日はFreelancer.comに見る3Dデータの需要をご紹介。

日本国内のクラウドソーシング市場

画像出処:矢野経済研究所

3Dデータ関連の仕事量は144%拡大

Freelancer.comは登録ユーザー数が1,000万人を超える世界最大のクラウドソーシングサイトだ。昨年11月には上場も果たし、世界規模で展開するこの業界のトップリーダーに成る。

このFreelancer.comがある興味深い発表を行っている。それはここ2年間で3Dデータ関連の受発注が急増していると言う統計グラフだ。 下記のグラフは2012年度から2014年の第2四半期までの仕事数の推移だが、2014年の第二四半期には約6000件にも登っている。

単純計算で1ヶ月2,000件もの3D関連の仕事がFreelancer.comを通して行われている事に成る。

3Dプリント関連の仕事数の推移

画像出処:Freelancer.com

その内訳内容だが、3Dデザインが31.6%でトップ。次が3Dモデリングで13.2%、3Dアニメーションが9.2%、3Dレンダリングが11%となっている。また、拡大の伸び率だが、2013年度で144%にも達している。こうした3Dデータ関連の受発注は今後さらに拡大が見込まれていくが、同時に人材不足も懸念されていると言う。

特に先進国における人材不足が懸念されており、今後は工学系や技術、数学に精通するSTEM分野の人材が重宝されるように成る。確かに3Dデザインや3Dプリント技術に精通する人材育成は、先進国において共通の課題であり、我が国においても経済産業省が中心となって中学校レベルから3Dプリントカリキュラムを組むことを計画している状況だ。

イギリスやアメリカなどはこの動きは早く、既に各学校レベルで導入しているケースも多い。いずれにせよ今後の3Dプリント技術の拡大に伴い、3Dデータや3Dプリントに精通する人材は重宝されることになる。

クラウドソーシングに3Dデータは最適

3Dデータ制作はクラウドソーシングと極めて相性がいいと言える。なぜならば、初めから3Dデータ化するためのデザインが出来上がっており、受注者はそれを3Dデータ化するだけだからだ。

このような言い方をすると誤解を招くかもしれないが、3Dデータ化にはデザインのような頭を使う「知の作業」が伴わず、単なる「作業」と言える。

これまで多くのプロダクトデザインの過程において3Dデータ化する作業は、デザインされたものを設計図通りにデータ化する一工程に過ぎなかった。それが3Dプリント技術の発展において、3Dデータの役割が重要視されるようになってきており、これからの時代のプロダクトデザイナーにとっては必須スキルだろう。

既にデザインされたものをデータ化する上では最適

まとめ -クラウドソーシングはデザインの品質を落とす-

しかし、ここで1点注意をしなければならないのが、あくまでも3Dデータ、もしくは3Dデザインは、単なる作業にすぎず、「デザイン」とは明確に分類されるべきものだということだ。

先にも述べたが「デザイン」は単なる外側を形作るものではなく、その商品や、その企業が持つ内面を最大限アウトプットしたものになる。 そのため極めて頭を使う仕事であり、単純に外側をかっこよくとか、なんとなくといった曖昧な仕事ではない。こうしたデザインの仕事内容を発注者側は分かっていないケースが多く、多くの発注者が、デザイナーの仕事を、「なんとなく感性でかっこよくしてくれる人」と認識している場合が多々存在する。

しかし、デザイナーは、その商品、企業の持つ、内面的なもの、社会的存在価値を最大限表現するために、あらゆる論理的思考法を用いて表現している。そのため「いいデザイン」というのは、必要なターゲットに対し、最大限その商品のよさを印象づけ、購買まで結びつけるものだ。

こうした高度な知の作業と、クライアントとの相互理解の上で成り立つ「デザイン」と言う仕事は、顔の見えない、ネット上におけるやりとりだけでできるものだろうか。

例えば、企業のロゴ一つ作るにしても、一定の決められた条件の元、不特定多数からコンペ形式で複数案を集めることが、その企業を象徴するシンボルマークを作ることについて最適なのだろうか。

発注者側が利用する意図はさまざまだろうが、あえて言わせていただくとクラウドソーシングの最大の弊害は、デザインの品質を落とすということだ。安い単価で、不特定多数の案を集めると言う方法は、デザイナーの表現力とやる気を落とし下請化するだけではなく、「いいもの」を作ろう、「人に価値を与えるもの」を作ろうと言う意識を低下させることにもつながりかねない。

さらに、いいデザインや、その商品、その企業に最適なデザインやロゴは、初めから発注者が条件を決めてできるものではない。

確かにインターネットとデジタル技術は多くの人々にコストカットと効率化と言うメリットをもたらすが、使い方は特定することが必要だろう。そうした側面から言うと、単純に既にデザインされたものをデータ化する3Dデータはクラウドソーシングに最適だといえる。

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